水素吸蔵合金の触媒化学的応用に関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63550607
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 今村 速夫 山口大学, 工学部, 助教授 (60136166)
• 研究分担者: 西田 晶子 山口大学, 工学部, 助手 (70144920)
• キーワード: 水素吸蔵合金 / 触媒 / 希土類金属間化合物 / 脱水素反応 / アルコ-ル / 金属水素化物 / 炭化水素

研究概要

水素吸蔵合金(Zr_2Ni,R_2Co_7,RFe_2など;R:希土類元素)の触媒への応用を目的として、合金の水素吸蔵能を利用したアルコ-ルや炭化水素類の脱水素反応を検討した。一般に脱水素反応は熱力学的に不利な反応であるが、水素吸蔵合金の吸蔵能を生かして脱離した水素をそのまま金属水素化物に転化することができれば、反応は金属水素化物の生成分だけエネルギ-的に有利となるため、低温でも進行可能になる。その上反応条件が温和となるため高選択性が期待できる。
Zr_2Niによるシクロヘキサンの脱水素では、反応にともないシクロヘキサン圧は減少し、それに対応して脱水素生成物であるベンゼンが定量的に生成した。しかし水素ガスの生成はほとんど認められず、脱離した水素は気相に放出されることなくすべて合金中に金属水素化物として吸蔵された。すなわち反応は次のような量論式で表される。
Zr_2Ni+n/6C_6H_<12>→Zr_2NiH_n+n/6C_6H_6
また脱水素速度はシクロヘキサン圧にはほとんど依存せず、合金の水素化に伴う水素吸蔵能の飽和とともに低下した。さらに、アルコ-ルの場合と同様に生成物による顕著な阻害の影響も認められた。メチルシクロヘキサンを用いた時はトルエンに脱水素され、やはり水素はすべて合金中に吸蔵された金属水素化物に転化された。しかし、その反応性は著しく異なりメチルシクロヘキサン>シクロヘキサンの順に減少した。一方、合金の脱水素活性はFe系よりCo、Ni系合金のほうが著しく高かった。また、合金はPt処理により反応性の向上することがわかった。これらの結果より反応の律速段階は合金表面に吸着した炭化水素の脱水素過程であると結論した。

研究成果

• [文献書誌] H.Imamura: "Dehydrogenation of Alcohol on Hydride-forming Rare Earth Intermetallic Compounds(RFe_2 and R_2Co_7)." J.Chem.Soc.,Fdraday Trans.I. 84. 765-772 (1988)
• [文献書誌] H.Imamura: "Hydrogen Storage in Metal Hydride by the Use of Methanol:A New Way of Hydriding by Chemical Hydrogen Carriers." Int.J.Hydrogen Energy. 13. 11-13 (1988)
• [文献書誌] 今村速夫: "希土類金属間化合物の表面特性と触媒作用" 表面. 26. 857-867 (1988)
• [文献書誌] 今村速夫: "光照射によって促進される希土類金属間化合物への水素吸蔵ーアルコ-ルからの水素移行" 日化誌. 1988. 1235-1237 (1988)
• [文献書誌] H.Imamura: "Hydrogen Storage in Rare Earth Intermetallic Compounds by the Use of Chemical Hydrogen Carriers." Z.Phys.Chem.,N.F.164. 1397-1402 (1989)
• [文献書誌] H.Imamura: "Efficient Photoassisted Hydrogen Storage in Rare Earth Intermetallic Compounds by the Use of Chemical Hydrogen Carriers." Z.Phys.Chem.,N.F.164. 1403-1408 (1989)
• [文献書誌] H.Imamura: "Efficient Dehydrogenation Using Hydride-Forming Alloys(Zr_2Ni,RFe_2 and R_2Co_7)as a Hydrogen Acceptor." Appl.Catal.