1.二酸化炭素の存在下でβー(メチルスルフィニル)ーβー(メチルチオ)スチレン(1)を電解還元すると、二酸化炭素とメチルスルフィニル基の置換が起こり、αー(メチルチオ)ケイ皮酸がβー(メチルチオ)スチレンと共に得られた。一般に、オレフィン類の電解還元によるカルボキシル化においては二重結合への二酸化炭素の付加とプロトンの付加が競争的に起こり、飽和脂肪酸が得られる。それに対して、本研究の様に不飽和脂肪酸が得られた事例は珍しく、大変興味ある結果が得られた。また、この電解還元カルボキシル化反応はポ-ラログラフ的研究より、1のー電子還元で生成したアニオンラジカルの二酸化炭素への求核的攻撃として特微ずけられることも分かった。 2.βー(pートリルスルホニル)ーβー(メチルチオ)スチレン誘導体(2)の電解還元カルボキシル化では、化合物1の場合と異なって、メチルスルホニル基とメチルチオ基の両方が脱離し、相当するケイ皮酸誘導体がβー(メチルチオ)スチレン誘導体と共に得られた。 3.β、βービス(メチルスルホニル)スチレン(3)とα、βービス(メチルスルホニル)スチレン(4)の電解還元反応では、安息香酸や酢酸の様なプロトンドナ-の存在下ではいずれも高収率でβー(メチルスルホニル)スチレンが得られた。他方、3の電解還元カルボキシル化は起こらなかったが、4からはαーフェニルーβー(メチルスルホニル)アクリル酸が得られた。 4.αーメチルチオーβ、βービス(メチルスルホニル)スチレン及びビニルトリメチルシランはいずれも電気化学的に難還元性であることが分かった。そこで、二酸化炭素存在下で二酸化炭素の還元が起こる電位で電気化学的カルボキシル化を試みたが、カルボキシル化物は得られなかった。
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