1.錯体の合成と軸方向配位性の検討。ニオブ、モリブデンを中心金属とし、ポルフィリンを配位子として平面型錯体を合成した。得られた錯体は、オキソあるいはオキソ架橋体であるが、ベンゼン溶液について、アルコール、フェノール、アミンなどを添加し、配位挙動を可視吸収スペクトルによって検討した。この結果、モリブデン(V)錯体では上記の添加物すべてが配位可能であり6配位錯体を生成することが明らかとなった。一方、ニオブ(V)錯体では、フェノール、アルコールなど酸素を配位原子とするものの配位が確かめられたが、ピリジン、ピペリジン等窒素を配位原子とする配位子の配位は認められなかった。これはニオブ(V)の強い酸素親和性によるものであると結論された。 2.光による軸配位子の活性化の検討。フェノール、アルコールを軸配位子に持つ錯体に対して、嫌気条件下及び好気条件下で可視光を照射して反応をESRスペクトルで追跡した。嫌気条件下での照射では配位結合の光開裂によって生成した軸配位子由来のラジカル及び中心金属の還元された錯体種が検出された。好気条件下では、フェノール由来の超酸化物配位の錯体、またはオキソ錯体が検出された。この結果嫌気条件下では、軸配位子を光化学的に活性化する反応の可能性が確かめられた。また、オキソ錯体の場合には、好気条件下での照射で超酸化物錯体が生成し、酸素化反応に利用できることが確かめられた。 3.光活性化反応のメカニズムの検討。オキソ錯体あるいはアルコールを軸配位子に持つ錯体のベンゼン溶液に対して、レーザー光(355あるいは532nm)で励起し反応を時間分解ESRスペクトルで追跡した。この結果、嫌気条件下での軸方向配位結合の光開裂は、電荷移動3重項、3重項ラジカル対を経て進行することが明らかとなった。一方好気条件下では、酸素分子の3重項ラジカル対への攻撃が速く進行する。
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