立体化学を精細に指定した有機化合物の高信頼度の3次元構造は生理活性物質などの分子設計・反応設計に不可欠であって、その迅速な取得が強く要望されている。米田は示性式入力から3次元座標を計算するエキスパート・システムSTERIC1と、示性式を結合関係表から記号化するENCODEサブシステムの開発を行ってきた。以下の向上によって、JICSTのデータベースから無作意に抽出した200個の化合物の約95%を正しく解決した。この成果は東大大型計算機センターで公開されている。 1.基礎団データベースの増強。比較的簡単な基礎団と、アルカロイドのように、縮合・代置では困難な複雑な基礎団を含む化合物をX線結晶データベースから検索し、自らが作成した処理システムにより立体化学情報を付加した3次元データを約100件を作成、増強した。さらにこれから精細な立体化学表現を含む、ENCODE索引ファイルも併せて作成した。 2.縮合環の幾何。スピロ環・架橋環を含む、縮合環の幾何をその構成する成分の環(単環または縮合環)の幾何から合成するプログラムを作成した。二個の飽和環の縮合に当っては、縮合環橋頭原子からの残留水素の選択により立体化学(αー水素など)が決定されるので、倫理的または試行錯誤的にそれを選定するプログラムの基本部分を作成した。 3.代置環の処理。複素環の3次元データの実測値が無いときは、IUPAC命名法のア代置法を導入して、幾何が既知の基礎団に代置法の修飾語を記述し、原子を入換えるとともに、その周辺の幾何を近似的に変更するようにした。 4.官能基の幾何の処理。一般に結合関係表は原子の並びで記述される。これからアジドのように通常の数値とは異なる幾何を有する官能基を検出して記号化し、特有の幾何を与えるプログラムを作成した。
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