特異的ブロードニングを利用した^<13>C-NMR法により、Cu(II)やMn(III)と各種単糖との特異的相互作用を、水-ジメチルスルホキシド系で溶媒の極性を変化させて検討した。その結果、Cu(II)やMn(III)などの遷移金属が糖質の多様な水酸基配列を識別して部位特異的に配位すること、およびその識別部位が金属の種類だけでなく、溶媒の極性によっても大きく変化することが判明した。特に、極性の低い溶媒中でのCu(II)とO-フルクトースとの相互作用は、平衡アノマー組成比の低いβ-フルクトピラノースの4位および5位水酸基にCu(II)が極めて特異的に配位するという従来報告例のない新しい形式の金属-糖相互作用であり、四面体型の銅錯体がフルクトース水酸基の配位にともない伸びた八面体型に変化することなど配位環境の変化に関する詳細な事実などもESRや電子スペクトルなどから明らかになった。この新しい配位形式は、同じ水酸基配列を有するβ-D-アラビノピラノースにも認められ、一般性のあることも確認した。 次に遷移金属を触媒とする糖質の選択的光酸化反応を行い、相互作用の特異性と酸化部位の選択性との関連について検討した。基質をD-フルクトース、触媒をFe(III)とし、溶媒として酸化反応条件下で安定なジメチルアセトアミドを用いて光酸化反応を行なったところ、酸素が酸化剤となる光-空気酸化反応が進行し、アラビノ-1、4-ラクトンが生成することが判明した。水中での同一機構での反応の詳細はすでに検討ずみであり、D-エリトロースが選択的に生成する。Cu(II)系での反応を現在検討中であるが、生成物の相違は、溶媒の極性が異なることによる遷移金属の糖質認識部位の変化を反映したものであり、遷移金属による糖質の認識部位を制御することにより、糖質の選択的C-C結合の酸化開裂が可能性を示す結果を得た。
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