研究概要 |
1.置換フェニルアゾ色素誘導体において、フッ素置換基が熱反応的Z/E異性化を抑制する機構を検証する目的で、置換アニリンのジアゾ化及びアニソ-ル,1-メトキシナフタレン、9-エチルカルバゾ-ル、及びN,N-ジメチルアニリンとのカップリングを、それぞれ、陰イオン型相間移動触媒反応系に用いてジアゾ化とカップリングを同一反応器中で行うワンポット操作法、また相間移動触媒反応法が適用できない場合には従来法を利用して、フルオロ基、及び置換基効果の比較対照体として、メチル-、クロロ-、トリフルオロメチル-、及びニトロ基を有する置換フェニルアゾ色素を置換位置について系統的に合成した。 2.合成した各種置換フェニルアゾ色素について、溶媒極性の異なるヘキサン、二塩化メタン、エタノ-ル中で、(1)分光学的特性値を測定、(2)吸光光度法によるアゾ色素の熱反応的異性化速度の測定を行い、アゾ色素Z体の半減期および異性化速度定数を求めた。また、(3)速度定数の温度変化から熱反応的異性化における活性化パラメ-タ、△H^≠及び△S^≠、を求めた。 3.置換フェニルアゾ色速の熱反応的Z/E異性化について以下の知見を得た。(1)速度定数の溶媒極性依存性が小さく、異性化は反転機構で進行する。(2)2-位フッ素置換基は異性化遅延効果を示し、特に2,6-二置換型の効果は相乗的に大きい。一方、3-、4-位フッ素置換基は加速効果を示す。(3)塩素-、メチル置換体はフッ素置換体と類似の遅延効果を示し、電子反発的な置換基による反転遷移状態の不安定化が遅延効果の主な要因であることを示唆する。(4)△H^≠-△S^≠相補関係プロットにおいて2,6-二置換体、特にフッ素置換体は他の同族体アゾ色素類の一般的規則性からの偏倚が大きい。(5)回転機構により異性化する同族体アゾ色素類では、遅延効果に対するオルト置換基効果の挙動が異なる。
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