天然のバクテリアあるいは酵母中の酵素は室温あるいは室温付近で高次な生体反応を進行させていて、これを利用する事により省資源、省エネルギ-的に特異的に物質を合成する事が出来る。近年、天然の酵素を模倣して、その特異的な反応の仕組みをモデルとして省資源、省エネルギ-化を目的とした有機化学工業への応用が盛んに行われている。この一環として非酵素的酸化反応を用いる不斉酸化について検討を行い、有機化学工業への利用について研究を行う事を目的とした。用いる系は、生体的酸化酵素のモノオキシゲナ-ゼをモデルとして、分子状酸素から酸素活性種を発生させるモデルを設計し、芳香族、オレフィン、および2級炭素への酸化反応について実験を行い、得られた知見から不斉酸化の有用性について検討する事とした。モデルの合成は、担持体を無機系と有機系とし、無機系としてはシリカゲルを、有機系ではポリスチレンゲルをそれぞれ選んだ。不均一系モデルを用いたベンゼンの水酸化およびオレフィンの酸化反応は、酸素雰囲気下30℃で行った。その結果、ベンゼンの水酸化は、モデルの違いにより反応性は大きく変化したが、今までのFentonらの収率(〜数%)よりも高い収率を与え、連続バッチ法が、工業的には有用性のある合成法が確立される可能性を示した。一方、アリ-ルクロライドからはいずれもエピクロルヒドリンを与え、特にキレ-トゲル/Fe^<2+>系を用いると30%の収率の向上が見られた。そこで、これら反応系の酸素活性種を直接的および間接的に検討を行った。直接的には、反応系の選択および補足剤を添加して、一方、間接的には、基質にトルエンとアニソ-ルを選び、水酸化における配向性についてそれぞれ検討を行った。その結果、これらの系での酸素活性種は、オキセノイド機構を支持する結果を与えた。これら得られた知見を元に不均一系不斉酸化オキシゲナ-ゼモデルの合成を行った。
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