クラウン環に捕捉されたアルカリ金属カチオンの静電場をアニオン性基質の認識部位とする人工触媒の構築を目指して、以下の触媒を合成し主として次の三点について検討した。(a)アルカリ金属イオンの種類と反応加速性、(b)クラウン環と触媒部位との距離と反応加速性、(c)触媒の認識部位の数による多点認識の可能性。チアゾリウム塩を用いた場合はα-ケト酸の脱炭酸、カルボキシル基を有するベンゾアルデヒド誘導体の酸化、及びEllman試薬の開裂、クラウンチオ-ル(7__〜、8__〜)を用いた場合は、p-ニトロフェニルベンゾエ-トのチオリシスに及ぼすアルカリ金属イオンの添加効果を調べた。いづれの場合も、アニオン部を持たない基質ではアルカリ金属イオン添加による加速は全くみられないが、アニオン部を持つ基質については大きな加速がみられた。またクラウン環を2個持つ触媒はアニオン部を2個持つ基質を認識し、選択的に加速することがわかった。以上の結果はクラウン環と触媒基をうまく組み合わせることにより、アルカリ金属イオンの存在で加速性のみならず、基質特異性をも発現する可能性を示唆している。
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