〔1〕高分子電解質錯体(PEC)の合成と物性評価:成分高分子電解質の疎水性にほぼ対応して表面の親・疎水性のバランスが変化する。この際、コ-ティング基盤の疎水性によりPECの配向が変化する。また、混合組成比の設定により、表面荷電のバランスも容易に制御することが出来る。ミクロ相分離構造も発現する。 〔2〕細胞の接着と機能評価: 肝細胞;1)PECへ効率良く接着する。2)接着力の強さはポリアニオンの構造に依存する3)膜タンパク質が直接関与した接着であり、2価カチオンの影響は小さい。4)PECと肝細胞の接着は、生理的機構ばかりでなく、非生理的な機構(主に静電的な相互作用)も重要な因子の一つとなっている。5)比較的接着力の弱いPECで肝細胞を培養すると、コラ-ゲンに匹敵するか、もしくはそれを凌ぐ機能維持が起きる。 インスリノ-マ細胞(株化膵臓細胞);1)PEC上でも細胞培養用ディッシュと同等の細胞増殖が可能である。2)比較的親水性のPEC上で培養すると、細胞集塊を形成し、高いインスリン合成・分泌活性を示した。3)細胞の凝集状態と機能に相関性があることを示唆した。 L-細胞;1)2X系PECにおける増殖は、疎水性の等しいポリアニオンを用いた場合は荷電が負になるに従い、また荷電バランスが等しい時は、疎水性の高井PECで増殖能が発現される。2)PVBMA系PECでは荷電、ポリアニオンに依存せず良好な増殖を示す。3)荷電バランス(0)における増殖性は、多糖類系PEC>合成高分子系PEC、スルホン酸基>カルボキシル基となる。 すなわち、細胞の機能を発揮させるためには、ある程度弱い接着力が必要である。
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