ポリスチレン球状粒子などの高分子コロイド粒子を水中でイオン交換樹脂を用いて高度に脱塩すると、粒子が結晶状に配列し、種々の特異な溶液性状を発現する。本研究においては高分子コロイド結晶が発現する根本原因を明確にしようとした。その結果、コロイド結晶は粒子間の静電的斤力によって発現することが明確になった。最近、国内の一部の研究者は何らの実験的根拠も無しに粒子間の静電的引力が存在すると主張しているが、これは全くの誤りである。本報告者はコロイド科学の真の発展のためにもこの誤りを正す必要があると考えて、本課題を最大限の努力で遂行してきた。本研究課題で達成された研究成果は大別して次の9項目になる。(1)高分子コロイド粒子の特性解析、特に有効解離電解数の決定、(2)信頼性の高い各種の気体、液体、結晶状高分子コロイド溶液の調製手法の確立とそれらの安定性の調査、(3)沈降平衡下における光学顕微鏡観察法の開発と本手法によるコロイド結晶の構造解析および結晶弾性率の評価、(4)沈降平衡下における反射スペクトルおよび透過光スペクトル法の開発、(5)高分子コロイド結晶の直流電圧、交流電圧、高圧力、遠心力、重力、ずり応力などの外場に対する応答性能の調査、(6)結晶および液体構造の構造緩和時間と粒子の並進緩和時間の解析、(7)高分子コロイド粒子および線状高分子イオンの回転拡散定数および持続長のストップトフロ-法による解析、(8)コロイド溶液の特異な粘度挙動の解明、および(9)線状高分子イオンおよび高分子ゲルの特異的粘弾性挙動の解明である。本研究が更に発展して高速応答性能を有する外場応答性素子の開発につながることを切望している。
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