誘電体中に分散した液滴に比較的弱い電場を印加すると、液滴は回転楕円体に変形し、さらに電場強度を増すとバーストする。この現象を高分子多相系(ポリマーアロイ)に応用すると、そのモルフォロジーを電場によって制御できると予想される。本研究はこのような応用に対する基礎的知見を得ることを目的とする。 本研究に対する科学研究費補助金により光学顕微鏡下で液滴の電場変形挙動を観察する装置を作り、さらにビデオカメラを用いてその挙動をビデオレコーダーに記録した。 ポリアクリルアミドの水溶液を液滴としてポリジメチルシロキサン中に分散させ1KV/cmの電場を印加すると、2段階の変形が見られた。早い緩和は液滴が弾性体として変形することに対応し、変形度は凝平衡弾性率Gに逆比例し、緩和時間はポリジメチルシロキサンの粘度に比例した。また緩和時間は粘性液滴と異なり液滴のサイズによらないことがわかった。これらの結果から液滴の変形度Dを(y-x)/(x+y)(y、xは楕円体の長軸および短軸の長さ)とすると、早い緩和の変形度D_1は D_1=9ε_oK_2E^2/(16G) と与えられた。ここにε_0は真空誘電率、K_2は媒体誘電率、Eは電場である。一方、遅い緩和の変形度D_2は粘性液滴の場合と同様に、表面張力に逆比例し、液滴のサイズに比例した。 電場を一定時間印加した後、電場を切ると、早い緩和および遅い緩和に対した、回復が観測された。早い緩和による回復の大きさは電場印加時間が長い程、小さくなった。この挙動は液滴の変形過程で応力緩和が起っていると考えると説明できる。またポリアクリルアミド水溶液にドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを界面活性剤として加え、界面張力の変形挙動に対する効果も検討した。
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