研究概要 |
昨年度に引き続き、誘電体中に分散した粘弾性液滴の電場による変形を観測し、電場によるポリマ-アロイの構造制御に関する基礎的研究を行った。 前年度の研究で、ポリアクリルアミド水溶液の液滴をポリジメチルシロキサンに分散させ電場を印加すると2段階の変形が見られることを見い出した。この挙動をさらに詳しく調べるため界面活性剤の一種であるセチルトリメチルアンモニウムブロマイドとサルチル酸ソ-ダの水溶液をポリジメチルシロキサンに分散させた系について電場による変形を調べた。この系はすでに四方らによって凝平衡弾性率Gnおよび粘弾性緩和時間がそれぞれの濃度によって自由にコントロ-ルできることが報告されている。 変滴の変形度Dを楕円体の長軸Xおよび短軸Yを用いてD=(X-Y)/(X+Y)と定義するとDの時間t依存性は次式のように表わされる。 D(t)=D_1〔1ーexp(-t/t_F)〕+D_S〔1ーexp(-t/ts)〕 F,Sはそれぞれ早い緩和,遅い緩和を表す。早い緩和の強度D_Fは D_F=(9εK_2E^2/16)(γ/b+5G^O_N/4)^<-1> と理論的に与えられた。ここにε_0は真空誘電率、K_2は媒体の誘電率、bは液滴半径である。実測値はこの値に近いことがわかった。一方、遅い緩和の挙動は粘性液滴の変形挙動によく一致した。しかしその強度D_5は理論より約40%大きい値を示した。この不一致の原因は現在検討中である。一つの可能性として界面張力の電場E依存性が考えられる。 次に緩和時間について見ると、早い緩和時間t_Fは液滴の粘度によらず、液滴の弾性率でほぼ決ることがわかった。さらに変形の時間依存性を詳しく見るため、液滴をVoigt要素とMaxwell要素が並列に結合されたモデルでおきかえた。実測結果はこのモデルでよく表現できた。
|