2次元及び3次元の凝集コロイド系についてシミュレ-ションを行い以下の結果を得た。1)完全に分散した凝集粒子系にずりを加えると、粘度は実験で観測されているようなS字形曲線を描いて増加しやがて定常値に達する。この粘度の振舞いを記述するために衝突凝集を基礎過程とするモデルを考えた。粒子の衝突パラメ-タとし凝集粒子の大きさの時間変化をよく説明することができた。2)定常状態の凝集体の構造は低濃度では最密充填に近いコンパクトな構造であるが、高濃度では乱れの多いル-ズな構造となりさらに濃度をあげると無限に大きな網目となる。3)濃度とともに凝集体の構造がこのように変化しているにもかかわらず、粘度のずり速度依存性には顕著な濃度依存性は見られない。また二体分布関数や、ボンドの配向分布の上にもずり速度の影響はほとんど現われない。これらの事は凝集コロイド系の粘度を決めているものは、凝集体のマクロな大きさでもなく、またミクロな局所構造でもないことを示している。現在、我々はマクロとミクロの中間の大きさをもつ“流動単位"のサイズが粘度を決めているという仮説を立てている。この仮説をいかに実証して行くかが今後の課題である。 これらの結果は、J.Chem.Phy.に発表したほか、基研研究会、谷口シンポジウムなど5回の研究会で発表した。 一方、最近になって新しい方向に研究の展開があった。凝集、分裂が重要になる別の系として液体分散系、即ちエマルションがある。お茶の水大学の太田隆夫氏と協力して、相分離過程にある液体系にずり流動を加えた状況のシミュレ-ションを行ない、同時に、この系について半現象論的理論を組み立たてた。この結果は論文としてとりまとめているところである。
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