濃厚な固体分散系は構造粘性とよばれる複雑な非線形粘性を示すことは古くから知られているが、その微視的な機構については未だに不明な点が多い。伝統的なコロイド科学は構造粘性を、粒子凝集体の形成と破壊にもとづいて解釈してきた。しかし、実際にどの様な構造体ができ、それが巨視的応力とどの様に結びつくのかについてはほとんど未知のままである。そこで本研究では、計算機シミュレ-ションにより濃厚な分散粒子系がずり流動場でつくる構造のと粘度の関係を調べた。 本研究では、剛体粒子系と凝集粒子系という二つの系について新しいモデルを考案してシミュレ-ションを行った。その結果、剛体粒子系については流体力学的相互作用だけで粒子はクラスタ-をつくり中濃度で網目構造、高濃度で層状構造をとるという事が分かった。また凝集粒子系についてはこれまで曖昧であった凝集体の構造についての詳細なデ-タが得られた。とりわけ、分散系においては凝集体の大きさが粘度を決定するというこれまでしばしば用いられてきた単純な図式は成立していないことが分かった。これらの結果今後の理論で明らかにすべき課題が明確になった。 一方、本研究から複雑な界面の含む系への新しい研究の芽が発生した。この研究は今後高分子共重合体、高分子ブレンド等の多くの問題に応用できる可能性がある。研究の結果は8編の論文及び会議録にまとめられた。
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