「光記録材料」が他の記録材料と比較して情報処理速度・容量の点で潜在的により優れているのは周知の事実である。繰り返し耐性向上のため非破壊読み出しの手法を採用すべきは当然として、高感度化・高SIN比を達成するためには内部増幅機能をもつデバイスを開発する必要がある。側鎖にフェニルベンゾエート(PB)を有するポリアクリレート(PAPB)は液晶性を発現する。光異性化するアゾベンゼン誘導体(AZO)をPAPBに分散するか、AZOをコモノマーとするコポリマーはAZOの光異性化により等温的にネマチックマ(N)【tautomer】アイソトロピック(I)の相転移を起こすことが明らかになった。この光誘起相転移では、分子量、主鎖-メソゲン間スペーサー長、温度が支配因子であり、分子量1万以上、スペーサー長3以外では相転移は誘起されず、かつ低温でも相変化は起こらなかった。ホモポリマー系よりコポリマー系の方が相転移速度は大きく、特にPBとAZOのスペーサー長が3の場合、最も速かった。高分子液晶の熱的測定およびFT-LRの2色性比から求めたオーダーパラメータからスペーサー長3の高分子液晶が最も配向性が低いことが明らかになり、初期状態で配向性の悪い高分子液晶系で光誘起相転移は起こり易いことがわかった。N→I転移後、高分子液晶をTg以下にクェンチするとI相は半永久的に保持され、これは高分子のセグメント運動を凍結した結果であり、高分子液晶を用いた光記録材料では画像安定性が極めて高いことが判明した。さらに高分子液晶では低分子液晶と異なりセルが不必要でフィルムに成型できるため、薄膜における光記録が達成できる。実際にフォトマスクを用いたレーザー光書き込みの実験を行なったところ解像度は2〜4μであり、照射条件等を選択することによりさらに向上すると予想される。情報読み出しは複屈折異方性を用いるので完全に比破壊型であり、書き込み/焼却も完全に可逆である。
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