前年度に引き続き、双環ラクタム1の溶液アニオン重合を室温で行い、片末端が活性化剤残基、他の末端がアシルラクタム型生長鎮末端である、構造の明確なポリアミド2を得た。得られたポリアミド2を多成分系高分子の成分として用いるため、アシルラクタム型末端基を種々の反応性末端基に化学変換した。p-ビニルベンジルアミンとの反応の場合は、片末端にビニルベンジル基をもつポリアミドマクロモノマ-3を得た。3と2-ビニルピリジンとのラジカル共重合をDMF中で行って、ポリ(2-ビニルピリジン)を幹とし、ポリアミドを枝にもつグラフト共重合体を得た。1のアニオン重合において、25〜51℃で残存モノマ-と生成ポリアミドとの間に平衡が成立することを確認した。平衡モノマ-濃度の温度依存性を調べて、1の重合の熱力学定数を算出し、他の単環ラクタムの場合と比較考察した。1のアニオン重合では活性化剤が重合初期にすべて消費され、生成した生長鎮末端が重合途中で失活しないので、得られたポリアミド2の数平均分子量は、重合率が増加するにつれてほぼ直線的に増加した。しかもそられは重合反応で消費された活性化剤とモノマ-の量からの計算値と一致した。一方、その分子量分布は重合初期では狭く、重合時間が長くなるほど、また重合系中のアニオン濃度が高いほど拡がることがわかった。 結局、本研究で用いた双環ラクタム1のように開環反応性が高いラクタムから単分散性ポリアミドを調整するには、触媒濃度を低くし、重合を初期で停止することにより、アミド交換反応及び重合一解重合平衡による繰り返し単位の再配列を抑制することが肝要であると言える。
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