本研究は、特異な性質を示すことが期待されるイオウを含有するポリアセチレンの分子設計、高重合体の合成方法の開発、生成ポリマ-の特性の解明などを目的とする。本研究の平成元年度の成果は以下のように要約される。 1ーメチルチオー1ーアルキン(MeSC=CR、R=エチル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル)の重合を遷移金属触媒を用いて検討した。MoCl_5とPh_3SiHとの1:2混合触媒により、これらのモノマ-から30〜50%の収率で重量平均分子量 (M^ーw)10万以上のポリマ-が生成した。それに対し、対応するW、NbおよびTa触媒は活性を示さなかった。MoCl_5に対して有機金属共触媒を加えない場合やnBn+Sn、Ph_3Sbなど他のものを用いた場合は多少ともポリマ-収率は低下した。重合溶媒としては種々の炭化水素およびハロゲン化炭化水素を用いることができたが、トルエンが非常に有用であった。モノマ-のマルキル基の長さは重合媒体にあまり影響しなかった。ノ-メチルチオー1ーオクチンは単独重合ではあまり高い反応性を示さないが、2ーオクチンとの共重合ではより高い反応性を示した。 生成したポリ(1ーメチルチオー1ーアルキン)は無色の固体で、アルキル基の短かいものは有機溶媒に不溶であったが、n-ヘキシルとn-オクチルを有するものはトルエン、CHCl_3などに可溶であった。これらの含イオウポリマ-は対応する炭化水素ポリマ-であるポリ (2ーアルキン)より高い熱安定性を有していた。 イオウを含有する芳香族アセチレンであるPhSC=CーnC_<10>H_<21>およびnBnSC=CーPhの重合および生成ポリマ-の性質に関する予備的な実験を行った。前者はMoCl_<25>ーPh_3SiHにより、後者はWCl_6により50%前後の収後でMW1万〜2万のポリマ-を生成した。
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