本研究は、特異な性質を示すことが期待されるイオウを含有するポリアセチレンの分子設計、高重合体の合成方法の開発、生成ポリマ-の特性の解明などを目的とする。以下に研究成果の要旨を述べる。 1.ポリ (1-n-アルキルチオ-1-プロピン) の合成と特性 1-n-アルキルチオ-1-プロピン(MeC≡CSR;R=Me、Et、n-Bu、n-C_6H_<13>、n-C_8H_<17>、n-C_<10>H_<21>)はMocl_5-ph_3SiH(1:2)触媒により、トルエン中、80℃で好収率(50〜80%)で重合した。それに対し、対応するW、Nb、Ta触媒は効果が小さかった。生成ポリマ-は1×10^5〜2×10^5の分子量を有し、従来合成されてきたいずれの含イオウポリアセチレンよりも高分子量であった。分光学的なデ-タよりポリマ-構造は〓CMe=CSR〓nであることが分かった。ポリ(1-メチルチオ-1-プロピン)を除いてこれらのポリマ-はトルエン、CHcl_3など通常の有機溶媒に完全に可溶であった。生成ポリマ-は無色、成膜性、空気中での比較的高い熱安定性、電気絶縁性、中程度の気体透過性などの性質を有していた。 2.1-メチルチオ-1-アルキンの重合とポリマ-の性質 1-メチルチオ-1-アルキン(MeSC≡CR;R=Et、n-Bu、n-C_6H_<13>、n-C_8H_<17>)の重合を遷移金属触媒により検討した。Mocl_5とPh_3SiHの1:2混合物はこれらのモノマ-からMw 1×10^5以上、収率30〜50%でポリマ-を与えた。アルキル基の長さは重合にほとんど影響しなかった。モノマ-、Me^-C【SY.identical with】C-n-C_6H_<13>は単独重合においては低い反応性しか示さなかったが、Me^-C≡C-n-C_5H_<11>との共重合では高い反応性を示した。ポリ(1-メチルチオ-1-アルキン)は無色固体で、長いアルキル基(R=n-C_6H_<13>、n-C_8H_<17>)をもつものは種々の有機溶媒に可溶であった。生成ポリマ-は対応する炭化水素ポリマ-であるポリ(2-アルキン)より熱的に安定であった。 いくつかの含イオウ芳香族アセチレンの重合についても検討した。
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