研究概要 |
本研究では、りんご酸を構成単位とする新規α-オキシ酸ポリマ-の開発を行ない、その加水分解ならびに生体吸収性を検討することにより、薬剤のリリ-ス制御を目的としたドラッグデリバリ-用のマトリクス素材として活用することを目的とした。 1.モノマ-の合成:β-benzyl malateおよびβ-ethyl malateとbromoacetyl chlorideのカップリング生成物をNaHCO_3の作用下にラクトン化を行ない、異なる側鎖置換基を有する2種の環状シエステル、3(S)-[(benzyloxycarbonyl)methyl]-(BMD)および3(S)-[(ethoxycarbonyl)methyl]-1,4-dioxane-2,5-dione(EMD)を合成した。 2.重合および共重合:BMD、EMDにオクチル酸スズ触媒を加えて塊状重合し、グリコ-ル酸(G)-りんご酸エステル(M*)重合体を得た。また、両モノマ-とL-ラクチドとの共重合により、乳酸(L)-グリコ-ル酸(G)-りんご酸エステル(M*)三元共重合体を得た。いずれの重合体の分子量も1〜5万であった。BMDの重合体および共重合体については、バラジウム炭素の存在下に水素化分解を行ない、側鎖ベンジル基を脱保護し、側鎖にカルボキシル基を有するα-りんご酸(M)共重合体が得られた。 3.加水分解・生体吸収性:L-G-M共重合体のフィルムをリン酸緩衝液中に浸漬した結果、その加水分解性がポリ乳酸に比較して著しく高いことが確かめられた。同フィルムをラットの背部皮下に埋入し、invivoにおける分解・吸収性を検討した。その結果、(1)in vitroとほぼ要じ分解速度を示すこと、(2)M組成が高いほど吸収速度が大きいこと、(3)埋入部に拒否反応はなく高い生体親和性を有すること等が明らかになった。以上の結果より、りんご酸単位を含むα-オキシ酸ポリマ-はドラッグデリバリ-のためのマトリクス材料として必須要件を備えていることを確認した。現在、マイクロスフェア-への応用を検討している。
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