1.目的 リン酸燃料電池は現在最も進んだ燃料電池であるが、電解質が液体であるため、電池の寿命や信頼性の点に問題がある。この困難を解決する一つの方法は電解質の固体化である。電極性能と触媒の対被毒性を考慮すると、電池の作動温度は200℃以上が望ましい。しかしながら提案されている既存のプロトン導電体はいずれも導電性を保持するのに水分の含有が必須なため、温度の上昇につれて導電性を失い高温での使用に耐えられない。本研究は従来のリン酸電池と同じ温度領域(200℃)で使用可能なプロトン導電体の開発とその燃料電池への応用を目的とした。 2.実験方法 オルトリン酸の重合体であるメタリン酸は室温ではガラス状固体であるが、200℃では粘稠な液体となる。その融点を上げるためケイ酸を加えたところ、目標の温度領域で固の状態を保った。ケイ酸の添加量を調節することにより、200℃で10Ωcmの桁の伝導度をもつプロトン導電体が得られた。これをディスク状に成形した後、白金担持のカーボンブラック製ガス拡散電極をディスクの両面に圧着し、酸素-水素燃料電池に組み立て電極特性を測定した。作動温度は200℃とした。 3.結果 電極性能は電解質中のケイ酸含有量に強く依存した。ケイ酸含有を少なくすると伝導℃は増大したが吸湿性が増した。電解質の吸湿によって電解質の部分的な溶解が起こり、溶解成分が電極細孔の目づまりを引き起こすため、ガス供給が断たれ、電極性能が低下することがわかった。酸素極側では電極反応の結果、水が生成するので電解質の吸湿性には特に敏感であった。電極の目づまりによる性能低下は電極の揮水性を高めることによってある程度防ぐことが出来た。特に酸素極の性能は揮水性の制御によって大幅に向上した。以上の諸要素を勘案すると結局ケイ酸を30%程度含む電解質を用いたとき最高の電極性能が得られ、300mA/cm^2の負荷電流を支えることが出来た。
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