本研究は、高温電池に比べて材料的問題の少ない中程度の温度領域で働く固体電解質燃料電池に用いるプロトン導電体の開発を目指したものである。初年度はケイ酸(Sio_2・nH_2O)とリン酸(H_3PO_4)の混合物を300゚Cに加熱して得られた白色固体粉末を加圧成形し、ディスク状の固体電解質とした。これにリン酸電池で用いたものと同じ多孔質電極を圧着し、さらにガス供給のためのフランジをとりつけて燃料電池とした。電池に酸素ガスと水素ガスを供給し、200゚Cで分極を測定した。水素極についてはリン酸電池とほとんど同じ性能が得られたが、酸素極は著しく性能が低く、電極性能の再現性も悪かった。電解質の加熱条件や、電極の撥水性を色々に変えて実験を繰り返したところ、酸素極側で生成する水分が電解質の一部を溶解し、電極細孔中に浸透し、電極の細孔をふさぐため酸素極の性能が低下したものと結論された。 水の影響を受けにくい電解質として、メタリン酸ガラスを骨格とするプロトン導電体の作製を試みた。メタリン酸にシリカを加え、1000゚Cで加熱熔融後、急冷するとメタリン酸ガラスが得られた。これを粉砕し、リン酸を少量含浸し、加圧成形することにより固体電解質とした。前の実験と同様の電極を用いて燃料電池を組み立て200゚Cで分極の測定を行った。水素極は大変高い性能を示したが、酸素極は充分な性能が得られなかった。酸素極の性能を改善するため、電極を粉末状にして圧着する方法、電解質も粉末として粉末状電極と同時に圧着成形する方法により、酸素極の性能を改善することが出来た。しかしながら、リン酸電池の性能と比べるとなお改善の余地があり、作動温度の高温化、有効反応面積の増大などが今後の研究課題として残されている。
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