本研究で対象とする原液は黒鉱からの亜鉛浸出残渣である2段中和石膏の硫酸浸出液であり、この中には約300ppmのGa、Inとその100倍程度のAl、Zn及びFeを含んでいる。この原液から3断の溶媒抽出行程を経てGaとInを分離、濃縮する湿式製錬プロセスに液膜法を応用することが本研究の目的である。まず第1段はカルボン酸系抽出試薬を用いてGa、Inを20倍に予備濃縮する工程であるが、抽出試薬としては2プロモデカン酸を用い、支持液膜法と乳化液膜法の双方について検討を行った。支持液膜法については次の結果が得られた。(1)原液中に共存する硫酸イオンがGa、Inの膜透過速度を著しく減少させる。(2)支持液膜法でGa、Inを20倍濃縮するには約20mの膜長が必要であり、既存の溶媒抽出プロセスに比較して必ずしも有利とは癒えない。次に界面活性剤としてスパン80を用い乳化液膜法の適用を検討して次の結果を得た。(1)原液のpH調整にカセイソーダやアンモニアを添加するのは、Na^+イオンやNH_4^+イオンが膜透過して内水相の酸を消費するので好ましくない。むしろpHを低下するにまかせた方がよい。(2)原液を水で2倍に希釈した方が抽出効率が上がる。これは抽出速度が硫酸イオン濃度の増加とともに急激に低下するためである。(3)乳化液膜法を適用することにより、従来のミキサセトラを用いた抽出プロセスに比して装置体積を1/10にまた抽出試薬量を1/50に軽減できる。次にジィソプロピルエーテル(IPE)を用いてGaを分離する第3段抽出工程への支持液膜法の応用を検討した。その結果、比較的水への溶解度の大きいIPEやTBPについてもボリプロピレン不織布を裏打ちしたテフロン多孔質膜(ラミネート膜)を用いることにより、安定な支持液膜を形成することができ所要膜長も10m程度ですることがわかった。
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