本研究では、官能基として、(1)アクリル酸(AcH)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(TBAS)(2)トリメチル-N-アクリロイル-3-アミノプロピルアンモニウムクロライド(TMAAPAC)を有するアクリルアミド系のゲル((1)はアニオンゲル;(2)はカチオンゲル;(1)+(2)は両性ゲル)を合成した。このイオン性高分子ゲルについて、ゲル内外のイオンの交換、水溶液中の電解質(NaCl、MgCl_2、Na_2SO_<4、>MgSO_4)・濃度及びpHとゲルの膨潤・収縮特性との関連性を実験、理論面から明らかにした。 1.AcH-TMAAPACを含む弱酸-強塩基型の両性ゲルの特注:(1)両者の組成比が4対1の両性ゲルでは:pH>7で膨潤し、pH>7で収縮した。電解質を添加すると、AcHのH^+と水溶液中のNa^+あるいはMg^<2+>がイオン交換し、これらのイオンの解離によって4<pH<7の酸性領域においてもゲルの膨潤が起こることが明らかとなった。この現象は、AcHのみのアニオンゲルの場合と同様である。(2)両者の組成比が1対4と逆の場合には、全pHに対する膨潤率曲線は台形型となった。この現象は、TBASのみのカチオンゲルの場合と同様である。(3)両者の組成比が1対1の場合にはpH>5でゲルは収縮し、1<pH<5で膨潤した。収縮現象は両官能基の解離に伴う官能基間の静電引力によって起こることが判明した。 2.ドナン平衡理論に基づく膨潤・収縮現象解析:ゲルの理論膨潤率をゲル内およびゲル外に存在するイオンの電気的中性条件、ゲル内の官能基および水の解離平衡関係を用いて推算する方法を確立した。さらに、この解析方法を用いて、ゲル内の各種イオンの濃度を推算することが可能となった。現在、TBAS-TMAAPAC(強酸-強塩基)系のゲルにこの解析方法を適用し、その妥当性について検討を進めている。
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