2液相を形成する凝縮伝熱に関し、凝縮面上に停滞液滴(standing drop)を生じない場合における平均伝熱係数の特性および伝熱機構を解明することを目的として実験的に研究し、つぎの成果をえた。 1.銅製凝縮面上に停滞液滴を生じないための面処理として、常温の硫化ナトリウム水溶液による反応処理法を前年までに開発したが、更に70〜95℃の水溶中で4時間以上熟成処理することによって、より持続性の高い凝縮面を実現できることが新たに判明した。この過程を電子顕微鏡写真によって比較した結果、銅面の研磨で生じた深い溝状の起伏が反応処理によって消滅し、面全体が硫化第一銅の斜方格子針状結晶で覆われて親水性を増しており、熟成処理によって高温域でより安定な立方格子粒状結晶に変化することが認められた。 2.高さ20、80、340各mmの銅性円筒状凝縮面について前項の処理を施し、2液相を形成する凝縮実験を行なった。ベンゼン・水系・トルエン-水系平均伝熱係数の測定値は、同じ膜温度差における有機物単一系の場合の数倍、停滞液滴存在下のデータと考えられる文献値の2倍程度の高い値がえられた。これらの測定値より、水相の膜厚さが有機相の共存によって増大すると考えた膜状凝縮モデルに基づく実験式を作成した。この式は、平均伝熱係数の対温度差依存性および対組成依存性を良く表現する。しかし、n-ヘプタン-水系については停滞液滴がない状態を長時間に亘って維持することが困難であった。凝縮面の持続性に関するこの差異は、界面張力の大きさの違いによるものと考えられる。 伝熱機構を解明するためにレンズ状液滴の挙動を解析する実験的研究は、円筒状凝縮面では良質の画像がえられず、不可能であった。したがって、平面状凝縮面について進めることとし、現在、準備中である。
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