1.増血ホルモンであるエリスロポイエチンに対するモノクローナル抗体を生産するEpo2C株を、アルギン酸とウレタンポリマーを用いた新しい固定化法で包括固定し、流動層で培養した。この方法によりモノクローナル抗体の50日以上にわたる長期連続生産が可能であり、またリアクター体積あたりの生産性は8倍に効率化された。この際、アルギン酸濃度を変えゲルの硬さの影響を調べたが、いずれも良い生産性を示した。一方、この固定化法では、固定化ゲル内の拡散律速により酸素の供給が不充分になることが予想された。そこで好熱菌αーアミラーゼに対するマノクローナル抗体を生産する16ー3F株を同様な方法で固定化し、純酸素を通気しながら培養を行なった。細胞が充分に生育していない固定化直後に酸素通気を行なったところ、細胞は死滅した。一方、細胞が充分増殖した後に酸素を通気すると、モノクローナル抗体の生産性が2倍に増え、酸素通気の有効性が明らかになった。 2.動物細胞の高濃度培養では、新鮮な培地を連続的に供給し培地交換を行なうことが必須である。そこで排水処理に使われる高分子凝集剤を検索し、キトサンとポリアクリル酸ナトリウムを用いることにより、細胞を凝集し細胞の沈降分離、すなわち培地の連続的交換が容易に行なえることを見出した。この方法によりマウス乳ガン細胞を2×10^7細胞/mlの高濃度迄培養できた。 3.ヒト由来の正常細胞は数十回の分裂の後死滅してしまうので、物質生産に利用することは難しい。そこでヒトの血管の内側を覆う血管内皮細胞を分離した後、サルのガンウイルスSV40の複製原点欠損株DNAを感染させた。このウイルスが感染した細胞株を数株分離してその性質を調べたところ、大巾に寿命が延びかつプラスミノーゲン活性化酵素生産性など正常な内皮細胞の機能を有する細胞株が樹立できた。
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