耐熱性酵素は一般に化学的変性剤に対しても耐性が高く、その安定性の故に工業的利用が期待されている。本研究の目的は、好熱菌の増殖を指標とした耐熱性変異酵素の簡便かつ迅速な選択法を開発することである。具体的には、最少培地で高濃度に増殖可能な好熱菌Bacillus stearothermophilus SI1株とその変異株(栄養要求性など)を宿主として、薬剤耐性遺伝子又は栄養要求性を相補する遺伝子をクローニングし、高温で連続培養することにより、容易に耐熱性変異酵素遺伝子を分離することができるであろう。 1)最少培地にて70℃で増殖可能な好熱菌B.stearothermophilus SI1を親株としてトリプトファン(Trp)要求性変異株(アントラニル酸合成酵素遺伝子、trpE、欠損変異株)を取得した。 2)Trp要求性変異株を宿主として、枯草菌trpE遺伝子をクローニングした。この遺伝子は好熱菌内で発現することを酵素活性測定により確認した。 3)遺伝子組換え体を最少培地で高温(70℃)培養し、生育した菌につきtrpE酵素の耐熱性変異を確認した。 以上の結果より、好熱菌を宿主とする耐熱性変異酵素遺伝子の迅速選択法が確立できた。
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