ニンジンを材料に、X線照射とIOA(iodoacetamide)処理を応用した細胞融合法により、1)正常稔性系統への雄性不稔性細胞質の導入による雄性不稔化個体の作出、2)細胞質雄性不稔系統への正常稔性細胞質の導入による可稔化個体の作出、さらに3)雄性不稔系ニンジンへのセルリ-細胞質の導入による異属間サイブリッドの作出、を目的に前年度に引続き基礎研究を行った。 コロニ-形成阻害の結果をもとに、細胞質提供側に60kRのX線照射を、細胞質受容側に10mMの10A処理を行ってPEGによる細胞融合を行った結果、いずれの組合せにおいても、得られたコロニ-から不定胚が得られ、その大部分は植物体に再分化した。しかし、目的とした雄性不稔形質に関しての変化は、いずれの組合せにおいても見いだす事が出来なかった。この実験で適用した60kRのX線照射や10mMの10A処理したプロトプラストをそれぞれ単独で融合した場合、若干のコロニ-形成が認められるため、本実験で得られた不定胚や植物体は、多分にこのような片親同士の融合産物に由来したものと思われた。このような問題を回避するため、片親同士の融合産物が分裂できない70kRと15mMで処理したプロトプラストを融合した結果、現在不定胚が得られている。今後、これらの不定胚から植物体を再生し、細胞質置換の有無を調査する予定である。 ニンジンの培養細胞から核の単離を試みたが、胚形成能の高い細胞は単離が困難で、胚形成能を失った液胞化した細胞のみで核を得ることが出来た。分化能を持たない核を用いた場合、植物体再生に困難が予想されるため、分化能の高い細胞で引続き単離条件を検討する必要がある。
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