カルスの再分化能と植物ホルモンの分布との関係を明らかにする前提として、オオムギ種子根由来カルスからの不定根分化と不定芽分化との制御糸、およびイネ胚盤由来培養細胞からの不定芽分化と不定胚分化の制御系の確立を目指すとともに、培養細胞における植物ホルモンの免疫組織学的検出について検討した。 オオムギ11品種を用いて種子根カルスから不定芽分化を誘導する条件を検討した。カルス誘導培地と再分化培地の各種ホルモンの種類、組み合わせ、濃度、浸透圧等を検討したが、不定芽分化には至らなかった。 イネ胚盤由来培養細胞において、再分化培地に添加する各種ホルモンの種類や濃度を検討した結果、通常用いられるプリン核をもつkinetinの代わりにサイトカイニン作用の強いジフェニルウレア型サイトカイニンの一種4ーPUーCl(1ー(2ーchloroー4pyridy1)ー3ーphenylurea)を高濃度で用いると高率で不定芽分化が誘導されること、低濃度のkinetinとABAを組み合わせて培地に添加すると高率で不定胚分化が誘導されることがわかり、再分化培地のホルモン組成を制御することにより分化経路の選択が可能であることが明らかとなった。NAAは分化率を向上させ、褐変を抑制したが、分化経路に及ぼす影響はあまりはっきりしなかった。組織学的な観察結果から、不定芽分化と不定胚分化とは全く異なる発生を行っていることも明らかとなった。 上記イネ培養系へ免疫組織化学的手法を適用し、IAAとABAの検出を試みたところ、用いた市販の抗IAAおよび抗ABAモノクロ-ナル抗体によってはIAAもABAも検出できなかった。これは抗原のエピト-プ部位が細胞の固定処理によって変性をうけやすいためと考えられた。今後はこのような変性を受けにくい部位を認識する抗体の使用が望まれる。
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