1.ソマクローナル変異として生じる体細胞突然変異の生成量を推定する方法として、核DNAの制限酵素分解物と反復配列DNAプローグのサザンハイブリダイゼーションパターンを母植物と再分化植物間で比較する方法を検討した。材料にはミドリアマナを用い、核DNAのHaeIII分解物から190bpの反復配列DNAをクローニングした。カルス由来再分化植物について染色体変異、水溶性タンパクの等電点電気泳動パターン、および反復配列DNAのサザンハイブリダイゼーションパターンを比較したところ、反復配列DNAハイブリダイゼーションパターンの変異は染色体やタンパクの変異とは独立に、しかもカルス誘導初期に生じたものと考えられた。今後はこの原因が高頻度の塩基配列レベルの突然変異なのか、大規模な塩基のメチル化によるのかを検討する。いずれにせよ脱分化初期のDNA変化を高感度で検出できる方法だと考えられた。 2.野生種タバコの核DNAの制限酵素分解物から数種の鎖長の反復配列と思われる配列を濃縮し大腸菌にクローニングした。今後はサザンハイブリダイゼーションにより反復配列であることの確認をとり、これをプローブにしてプロトプラスト由来再分化植物について比較を行う。 3.タバコの分化を終了した緑葉にUVを照射した後、光回復あるいは暗回復を行わせ、抽出したDNAをマイクロコッカスノエンドヌクレアーゼで処理しピリミジンダイマー特異的な単鎖切断を起こさせた上でアルカリアガロースゲル電気泳動を行って、ピリミジンダイマーの修復能を推定した。その結果、分化した緑葉が明らかに光回復能をもつこと、またこの方法は非常に検出感度が高いことがわかった。今後はこの方法を用いて、培養細胞との比較により細胞分化とDNA修復能の関係を詳細に検討する。
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