研究概要 |
山印交雑水稲品種・統一とその育成に関係したユーカラ(日本型)、台中在来1号、IR-8,Petaおよび低脚烏尖(いずれも印度型)の計6品種を用いて、環境による根の形質の表現型変異とあわせて根の形質の遺伝について調べる目的で実験を行った。本年度は根の形質発現に対する地上部の影響を除くため根端培養系を用いた。培地は頼ら(1971)のR_2培地とそれに0.1%カザミノ酸を添加した培地(R_<2C>)を使用し、カザミノ酸添加の有無に対する各品種の形質を調査した。根の形質としては、種子根軸長、L型おらびS型1次側根の数・長さをとりあげた。まずこれらの形質発現を調査するのに適切な培養期間を決めるため、台中在来1号の根端をR_2培地で培養し、経時的にこれらの形質の変化を調べた。その結果、種子根軸長及びL型1次側根数・長さは3週目でほぼ増加を停止するが、1次および2次側根数・長さは6週目でも増加することを認めた。しかし根の形質発現を調査するのには3週間の培養期間で充分であることを確めた。カザミノ酸添加の有無に対する各品種の反応を比較した結果。1)S型ならびにL型1次側根は、両培地で全ての品種で出現し、1次側根の異型根性は保守的形質であることが確められた。しかし、L型1次側根の発生はカザミノ酸無添加条件でユーカラでは著しく減じた。2)両区における高次側根の発達程度は、ユーカラと統一で比較的劣ったが、他の印度型4品種では両区に共通した根系の形態上の特徴を見い出すことは困難であった。3)両区における根長および根数形質の変化のパターンを比較した結果、台中在来1号と低脚烏尖は類似を示した。またIR-8も種子根軸の伸長性では低脚烏尖の、分枝性ではPetaの、それぞれ両親の特徴を具えていた。統一の根長・根数形質には、Petaの特徴と共通性が認められ、片親のIR-8を介してPetaの特徴が導入されたものと推察された。
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