浮稲の物質生産力を高めるための基礎として、深水条件下での光合成能力並びに光合成器官の維持の仕方について調べた。 1.浮稲は深水条件下で主稈の葉令を進め、葉数を増加させた。また、著しい節間伸長により、最上位のカラー部をほぼ水位のレベルに維持し大部分の葉身を水面上に維持した。 2.単位葉面積当たりの光合成速度は、上位葉では対照区に比べて深水区で高く、逆に、下位葉では対照区で高かった。 3.主稈当りの光合成速度は、対照区よりも深水区で高かった。 4.光合成速度と拡散伝導度との関係をみると、光合成速度と葉肉伝導度との関係は極めて密接であるが、光合成速度と気孔伝導度との関係は品種によって大きく異なり、気孔の関与の仕方には品種間差異があると推定された。 5.深水条件下における光合成能力の推移を調べた結果、深水処理後に出葉した葉では影響が認められ、出葉直後は深水区で高く、加令に伴って対照区よりも早く低下した。 以上の結果より、浮稲は葉令を進めることと著しい節間伸長により、光合成能力の高い葉を水面上に確保することで深水に対応しているものと結論された。
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