日射量、移植期および栽植密度を多様に変えた圃場条件下で多収品種(水原258号、アケノホシ、レイホウ)を栽培し、各品種の物質生産特性を比較解析し、多収機構を明かにした。 [実験結果] 最も多収を示した水原258は1穂粒数が多く、しかも移植期や栽植密度などの栽培条件の変化に対しても変動が少なかった。このため、密植条件下で茎数も粒数も増加し、多収を示す結果となった。また、この品種は分げつ数が多く、直立型草型であるため、密植条件下においても他品種のように過繁茂とならず、高い登熟歩合を示した。 さらに、移植から出穂までの期間およびこの間の積算温度がほぼ一定となる特徴を有していた。そのため、出穂日が移植日の早晩に平行して変動するので、移植時期を移動することによって登熟期を最適気象条件の時期に合致させることが容易である。 超多収水稲を800kg/10aを超える玄米生産力を有するものとすれば、水原258号は早期移植と密植を前提とすれば十分可能との見通しが得られた。 なお、早期移植の場合、出穂までの生育期間の日射量が不安定であるので、多収穫をより確実なものにするには、基肥の多用等により生育初期段階から個葉の光合成能力の向上や葉面積の拡大を図り、茎葉部内の物質蓄積量を増大させることが効果的であると考えられた。
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