1989年度には、前年度と同様に、濃度の異なる無機塩類(MS、1962とGamborg、1966)と植物ホルモン(BAPとIBA)を組合せた4種類の培地、すなわち、MB、MI、GB、GIを用いて、イネ科、マメ科、水草およびサクラ類、チャノキ、ガクアジサイを材料にして茎頂培養を行った。草本植物および木本植物ではともに初代培養で良好な成育を示す倍地は概ね継代培養においても良好な結果をもたらした。いずれも、IBAい比べBAPの方が優れていた。BAP濃度を同一にし、2種類の無機塩類に着目すると、草本植物では濃度の高いMSが、一方、木本植物では濃度の低いGamborgがより良い結果をもたらす傾向であった。また、初代培養における倍地の前歴は継代2代目以降の茎頂の成育に著しい影響を及ぼすものであることが明らかになり、とくに、茎頂生育開始に無機塩類が引き金的役割をはたしているのではないかというこをと知った。さらに、木本植物、とくにソメイヨシノやヤマザクラでは初代培養の成否が茎頂摘出時期と関連しており、明らかな季節変化が認められた。 厳寒期に、屋外で生育した大麦、ホワイトクロ-バ-、ソメイヨシノおよびヤマザクラは凍害防御剤DMSOを添加した場合、液体窒素中で凍結保存した後、生存していることが確認された。また、氷点下の低温に茎頂を暴露することによって茎頂の生育が促進されることもわかった。 今後は、茎頂培養における無機塩類の役割、すなわち、MSやGamborg(1966)が何故茎頂の生育に重要な影響を及ぼすのか、その要因を、これら無機塩を構成する各種イオンとその濃度に着目して解明するのが極めて要重であることを見いだし得た。
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