本研究はストックとウォ-ルフラワ-の交配実験と胚珠培養及び試験管内授精の技術を組み合わせ黄色花を持つ属間雑種を作出、並びに両者のプロトプラストを単離し異種プロトプラスト間の細胞融合を試み体細胞雑種を作出すること、また併せて上記の方法によって作出された商品価値の高い植物体を大量増殖するための技術の確立のための基礎的知見を得ることを目的に行った。 1.ストックとウォ-ルフラワ-との交雑 交雑によって得られた植物体の諸形質及び開花の早晩は、ほとんど母親の品種よく似たものであった。しかし‘紫鵬'בアリオニ-オレンジ'の交雑種子の花色は白色となり紫色の花色を持つ母親と異なっていた。また♀‘早雪'×♂‘オ-ルダブル'の交雑種子からの植物体の花色も淡黄色となり、白色の母親と異なっていた。ストックとウォ-ルフラワ-のパ-オキシダ-ゼアイソザイムパタ-ンが異なっていたことから交雑種子がF_1であるかどうかの検定が可能となった。 2.カルスからのプロトプラスト単離・培養:プロトプラスト収量については明所で培養したカルスから単離したプロトプラストの方が高かったが、暗所で培養したカルスから単離したプロトプラストが培養開始後2日目から固形培地上で分裂し始めた。その後分裂を続け、コロニ-に生長した。1ケ月後に、コロニ-培養中の培地にBA0.3mg/添加した液体培地を加え培養を続けたところ、3ケ月後肉眼で白色のカルスを確認できた。 3.電気的細胞融合:融合のための前提となるプロトプラスト同士の接着、すなわちパ-ルチェイン形成の最適条件を検討するため、交流周波数を1MHz、泳動時間を20秒と設定し、パ-ルチェ-ン形成に対するプロトフラストの密度と高周波電界の影響について検討した結果、密度が10^5個/ml、高周波電界150V/cmが適当であると思われた。次いで一過的膜破壊及びその後のプロトプラスト融合については、パルス電圧が高く、またパルス幅が広くなるに連れてプロトプラストの破損率は高くなる傾向があり、パルス電圧1.5kV/cm、パルス幅70μsが適当であると考えられた。 4.組織培養による大量増殖 シュ-ト形成に影響する諸要因の中で、品種間差異、外植体の種類、植物ホルモンの種類と濃度、窒素源、キャップの種類等について検討した。外植片として本葉切片及び下胚軸由来カルスを用い、1/2MS培地を基本培地として、これに植物ホルモンとしてBA、ゼアチンなどのサイトカイニン類、窒素源にグルタミン酸を添加した培地上で培養した場合高いシュ-ト形成率を得ることが可能となった。
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