研究概要 |
カンキツ及び近緑種を多数供試し、グルタミン酸オキザロ酢酸アミノ転移酵素(GOT)をコードする遺伝子及びその対立遺伝子を解析し、さらにその他数種の酵素の遺伝子・対立遺伝子についても解析を行った。 GOTは三遺伝子座(Got-1,2,3)に支配されており、それらの間連鎖はなかった。Got-1,2,3ではそれぞれ5,5,7対立遺伝子を確認した。Got-2とGot-3ではそれぞれ三つの対立遺伝子B、C、Iに支配されるアロザイムの泳動距離が完全に一致し、またこれらの対立遺伝子を持つ品種がかなり多く見られたことから、Got-3はGot-2遺伝子が重複して進化したものであると考えられた。しかし、Got-2アイソザイムはサイトゾルにGot-3アイソザイムはプラスチドに局在することから、重複の起源はかなり古いものと思われる。 各遺伝子座における個々の対立遺伝子は特定の種又は種群に特異的に出現した。この結果をもとにカンキツの系統発生を以下の様に推察した。カンキツはまず原始シトロンと原始マンダリンが分派し、これらから原始ブンタンが出現した原始シトロンからはパペダ・ライム・レモンが雑種群として派生した。原始マンダリンからはタチバナが派生し雑種群を作った。マンダリンとパペダとの雑種からユズ類が出現し、ブンタン類とマンダリン類の雑種からサワーオレンジやスイートオレンジが出現した。雑柑類はさらにこれらり雑種から多数出現した。 他の酵素では3遺伝子座で11の対立遺伝子を確認した。これらの対立遺伝子変異はGotアイソザイムにおける対立遺伝子変異を基に推測したカンキツの系続発生とよく符合した。 一方、これら多数の対立遺伝子は品種の同定、珠心胚実生と交雑実生の識別及び雑種検定におけるマーカー遺伝子としても有用であることが示された。
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