有鱗片シャクナゲはその樹姿がサツキなどの常緑性ツツジに酷似し、かつ極めて優れたブル-の花色をもつものがあるが、残念ながら耐暑性に欠ける。またこの有鱗片種には、種間に交配不和合性や雑種後代の不稔性が可なり広く介在する。そこで原種及び品種26点について、総当り的交配を行い、結〓率、種子数、種子の発芽率等に母本自体の耐暑性や観賞性も加味した検討を加え、2原種・7品種を有望な素材として選出するとともに、これらを中心に重点的な交配を行った。また極く低率ではあるが、高い耐暑性をもつ藤色花の常緑性ツツジ、マルバサツキとの間に交配の可能性が示唆された。次に花色の青色化の機構を解明するためHPLCによる色素の分析をアグリコンレベルで行い、アントシアニンの水酸化の他にメチル化、フラボノ-ルのメチル化及びコピグメント化の4要因が重要な役割を果たしていることを明らかにし、育種素材とその組合わせた方に大きな手がかりをえた。またこの研究過程で一部赤色系品種に未知の黄色々素の存在を認め、本属全体の再検討の必要性を指摘した。 一方黄色系については落葉性ツツジ、次いで有鱗片種に強烈な黄色の花色がある。そこでこれらを中心に無鱗片種及び常緑ツツジ(1品種)を加え、黄色を狙った亜属間及び亜属内遠縁交雑を行った。亜属間交雑は総じて困難で、正逆交雑や母本の如何によってその結果が異なった。そのうち種子がえられたのは6組合わせであったが、発芽したのは無鱗片種×落葉性ツツジ、有鱗片種×無鱗片種(正逆両方向)の3つの場合であった。一方亜属内では最も有望な有鱗片種相互の交雑を中心に行ったが、母本自体に高い不稔性を示すものが多いことから倍数性育種の必要性を示すとともに、若于の有望な組合わせを選出した。この他無鱗片種相互の交雑で、黄色因子を持つ多数の耐暑性実生固体を育成した。
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