デンドロビウムの、切り花として栽培されるグル-プのランを対象に、沖縄の亜熱帯気象条件下における発育生態を、品種間比較を合わせて調査検討した。供試した品種は沖縄で栽培されているもののおよそ20種で、萌芽から開花にいたる生長サイクルの動きと、栄養生長および開花に関する諸形質を比較することの両面から検討した。また一部の品種については、環境制御下における発育の様相を検討し、さらに光合成における炭酸ガスの取り込み方、また開花の際にみられる落らい現象についても要因の検討を試み、これらの面では品種間差も合わせて検討した。得られた結果の概要は次のとうりである。 1.冬季に低温となる亜熱帯気候下においては、強制休眠を経て萌芽期が春季に集中し、その結果開花が秋期に集中することとなり、これは避けられないことと判断された。2.その中で栄養生長に要する期間にはかなりの品種間差があり、とくに早生性を示すD.Pramotは、開花期間の延長拡大に貴重であることが示された。3.茎長、葉数などの栄養生長に関する形質、開花本数、花序長、輪数などの生殖生長に関する形質についても、それぞれの枠内でかなりの品種間差があることが示された。4.温度に関しては日昼温度40度を越える中でも障害はみられず、他方夜温が20度になると大幅な生長の遅れがある点で、典型的な高温性植物であることが示された。5.光合成様式については、夜間に炭酸ガスをとりこむCAM型タイプであることが明らかにされ、またその光合成能と葉齢に関しては、前年性の旧葉においても高い状態で維持されていることが確認されたが、品種間差はほとんど見られなかった。6.花らいの黄化萎凋については、高湿度、温度の急変の影響が大きく、花らいの生成するエチレン量とも連動することが示され、またその落らいの難易性にはかなりの品種間差があることも確認された。
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