本研究の目的は、1)ショウガ(Zingiber officinale Roscoe)の不稔性の原因解明、2)収集系統における稔系統の探索、3)4倍性ショウガにおける稔性向上に期待し、in vitroにおける4倍性ショウガの作出条件を検討することにある。 核型は、日本、中国、オーストラリア、ペルーおよび東南アジア諸国から収集した18系統を用いて分析した。分析した系統は、すべて2n=22の染色体数を有していた。しかし、最長の染色体から4番目の染色体には、形態上相同と思われるものはなく、なんらかの染色体構造変化の存在が示唆された。花粉母細胞の減数分裂は、‘三州'を用いて観察した。第1分裂中期のほとんどの細胞は、11の正常な2価染色体で対合し、残りは10II+2Iおよび9II+4Iの対合型であった。しかし、第1および第2分裂後期には、染色体橋および染色体断片が頻繁に観察された。 これらの観察結果からは、ショウガの不稔性が主として染色体の構造変化によって誘起され、少なくとも‘三州'の場合は、染色体逆位によって不稔となっていることが示唆された。 調査した18系統の花粉稔性は、0.9%-21.4%に変異した。花粉発芽性は、1%寒天、8%ショ糖および100ppmホウ酸を含む培地上に、花粉を30℃条件下で24時間置床し調査した。調査系統の花粉発芽性は、いずれも著しく低かった(0%-0.2%)が、発芽した花粉の花粉管伸長は正常であった。 次に、in vitroにおける4倍体作出を目的に、茎頂外植体の形態形成について調査した。外植体(葉原基2〜3枚を含む)は、偽茎から摘出した。培養体のmain shootsの生長は、MS基本培地(3%ショ糖を含む)に、2ppm BAおよび0.05ppm NAAの添加で最も良好であった。したがって、外植体のコルヒチン処理(0.2%)は、2ppm BAおよび0.05ppm NAAを含む固形または液体培地に0.2%コルヒチンを添加して行なった。4倍体は、液体培地で処理し、液体培地で育成した植物体よりも、固形培地で処理し、固形培地で育成した植物体から多くえられた。処理期間は、いずれの培地形態においても、8日間が最も効果的であった。 育成した4倍性ショウガは、2倍体に比較すると、草丈高く、分げつ数は少なくなり、根茎は大型化して、晩生化した。そのため4倍性ショウガは、冬期に抽台し開花したので、花粉稔性および花粉発芽性は調査できなかった。
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