1.植物2次物質の解毒酵素の1つ、グルタチオンS-トランスフェラ-ゼ(GST)をタマネギバエ Hylemya antiqua Meigenより抽出精製したところ、1分子種のみを認めることができた(1988年度)。アインザイムの存在を検知する目的で、このGSTに対するポリクロ-ナル抗体を作製し免疫染色を試みた。即ち、タマネギバエ幼虫のホモジェネ-トを、SDS-PAGE、ウェスタンブロッティングにより分離・固定し、免疫染色により精製GSTと血清学的に類縁なタンパクを検出した。この結果、精製GSTと同位置に1本だけバンドが認められたので、GSTのアイソザイムは、もし仮に存在するとしても血清学的に類縁性のないものであるとの結論を得た。 2.ス-パ-オキシドディスムタ-ゼ(SOD)は、体内中で生成する有害なス-パ-オキシドラジカルを除去する酵素として注目されている。最近、植物2次物質の中には、それを摂取した昆虫体内で多量のス-パ-オキシドを生成させるものがあることが分かった(プロオキシダント)。そこで、植物2次物質を全く含まない化学合成飼料で無菌的に飼育タマネギバエ幼虫と、寄主であるタマネギで飼育した幼虫のSOD活性を比較したところ、後者は前者の2.5倍の活性を持っていた。また、タマネギのメタノ-ル抽出物を合成飼料に添加すると、SOD活性は1.6倍に上昇した。タマネギ中に存在することが知られているプロオキシダントの1つ、ケルセチンを合成飼料に添加したところ、タマネギ中の含有量である0.01%ではわずかなSOD活性の上昇が認められるだけであった。したがって、タマネギ中にはケルセチン以外にSOD活性の上昇を誘起する物質が存在すると考えられた。
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