研究概要 |
前年度に、植物の褐変の進行にともないg=2,004付近に幅約8Gのシングレット吸収が増大すること等を明らかにしたが、最終年度は特に植物病原菌接種による褐変過程におけるラジカル生成を詳細に分析することにより、耕種的防除法について検討を行った。具体的には、カンキツかいよう病菌Xanthomonas campestris pv.citriより、自殺ベクタ-pSUP1021をもちいたランダムトランスポジションによる病原性欠損株を10株を分離し、これらについてタバコ培養細胞を用いた植物病原菌に対する過敏感反応による褐変機構について野性型との比較を行った。野性型菌は顕著なタバコ培養細胞に対する増殖阻害及び褐変誘導を行うのに対して、1変異株がこの能力を完全に失っていた。そこでこの変異株と野性型について、フリ-ラジカル生成と密接な関連を示すことが知られている化学発光量を経時的に調べてみたところ、前者が接種後3時間頃より急激な上昇を示すのに対し、変異株では接種後1時間で若干の上昇が見られたものの、その後の急激な上昇は見られなかった。これは典型的な過敏感反応欠損株の示すパタ-ンであり、感染極初期におけるラジカル生成が過敏感反応誘導に重大な意味を持つことが判明した。尚、過敏感反応誘導能と植物病原性との間には密接な関係があることが多くの植物病原細菌で明らかにされており、植物体内のラジカル生成及びその抑制のバランスを混乱させるような条件が耕種的防除法として有効であることが示唆された。今後、スパ-オキシドデスムタ-ゼ等のラジカル除去遺伝子の植物体内への導入及び発現による細胞レベルでの抵抗性付与育種法及び感染時期の紫外線照射等による耕種的防除法の有効性を示すことが出来た。
|