合成ピレスロイド剤の散布とハダニのリサージェンスの関係をみるため、ナス圃場に発生するカンザワハダニ個体群の発生動態に対する種の合成ピレスロイド剤の影響を調べた。使用したピレスロイドは、殺ダニ活性がないとされるフェンバレレートとペルメトリン、および殺ダニ活性があるとされるフェンプロパソリンであった。対照区として、従来の殺ダニ剤(フェンブタスズ)、殺虫剤(MEP)散布区および無散布区を設けた。各区は5株ずつからなる2本仕立ての露地ナスで、各薬剤散布区は2反復、無散布区は4反復とし、各区はランダム配置した。各薬剤散布は月1回、計5回行い、ハダニおよびその天敵の個体数調査は6月中旬から11月まで週1回行った。 3種のピレスロイド散布区ではいずれも3回の顕著な発生ピーク(リサージェンス)がみられ、それらのピークはいずれも散布後3〜4週間目にみられた。これに対し、無散布区およびMEP区では2週間目に発生ピークがあったが、それ以後はあまり顕著なハダニの増加はみられなかった。また、酸化フェンブタスズ区では一貫してハダニは増加することなく、低密度で推移した。 3種のピレスロイド区での発生ピークレベルをくらべると、フェンプロパソリン区でのレベルは他とくらべて低く、MEP区とほぼ同じであった。 発生した天敵類では、捕食性カブリダニと捕食性ハナカメムシが優占種で、これらの発生量はいずれもピレスロイド散布区で顕著に少なかった。今後、天敵発生量の多少がハダニの増加にどの程度関与しているか、またピレスロイド散布による他の影響がハダニのリサージェンスをひきおこすかを、より精密な実験操作を加えた散布実験が必要である。
|