1)合成ピレスロイド剤の散布によってハダニの作物株間の分散が促進されるのかどうか、およびそれによってハダニ固体群の密度上昇がおこるかどうかを調べた。調査は株間55cmに植えたナス園で行い、薬剤にはペルメトリン1000倍液を使用した。その結果、たしかに散布によるハダニの分散促進はみられたが、それによってその後のハダニ固体群密度の有意な上昇はみられず、分散促進がハダニのリサ-ジェンスの要因であるという仮説は否定された。 2)これまでの調査から、ハダニのリサ-ジェンスの主要因は天敵相の破壊であることが予想された。そこで今回は、天敵類のうち歩行性のカブリダニ類、飛翔性のハナカメムシ、両方の分散手段をもつクモ類がハダニ固体群の変動におよぼす効果を分離する実験を行った。上記のナス園で、ナスの株元に粘着性トラップを付けてカブリダニの侵入を防いだ区とそうでない区を設け、それぞれの区でさらにペルメトリン散布区と無散布区をつくり、ハダニおよび天敵類の固体数を調べた。その結果、散布区ではハナカメムシとクモ類が散布直後に激減し、それらが再度ナスに侵入するまでに2週間を要した。その間にハダニは固体数を増やし、無散布区にくらべて10倍以上の高密度になった。このように、カブリダニを排除した区でもハダニの顕著なリサ-ジェンスがみられることから、ハダニの固体数制御に果たす役割はハナカメムシのほうが相対的にはるかに大きく、リサ-ジェンをひきおこす主要因は、ピレスロイド散布によるハナカメムシの死亡、および散布後約2週間にわたる薬剤の忍避作用による再侵入阻止であると結論できた。
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