研究概要 |
1.合成ピレスロイド剤散布下のナス園におけるカンザワハダニ,ミナミキイロアザミウマおよびそれらの補食性天敵類の個体群動態のこれまでに得られた調査デ-タに若干の補足実験を加え,ハダニ類のリサ-ジェンスのメカニズムを解析した。 2.ハダニ類のリサ-ジェンスは,ピレスロイド剤の殺ダニ活性の強さにかかわらずおこり,その主な要因は,合ピレ剤散布による殺虫・忌避効果によって主としてハナカメムシが排除されるためである。 3.ハナカメムシは多食性で,ハダニだけでなく,同時に発生するミナミキイロアザミウマにも餌として強く依存する。そのため,ハナカメムシは必ずしもハダニの空間密度の変異に依存した移動・増殖を示さないが,たとえアザミウマの密度により強く依存した数の反応を示しても,結果としてハダニ類の個体数制御に大きく寄与している。 4.ハダニ類のもう一つの主要な天敵であるケナガカブリダニによるハダニ個体群制御効果をみるため,飛翔移動を行うハナカメムシをブロックするアミかけ実験を行い,カブリダニの効果を分離しようとした。しかし,ハナカメムシの移動が完全にブロックされなかったこともあり,またケナガカブリダニの発生レベルが低かったため,ハダニへの制御効果はわずかであった。移動力にすぐれたハナカメムシと異なり,ケナガカブリダニの発生は周囲の作物におけるハダニ類の発生に大きく左右され,またハダニ密度の空間的変異への対応も不十分であるため,ハダニ個体群制御効果はハナカメムシよりも不安定であることが示唆された。
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