研究課題/領域番号 |
63560047
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 史樹 広島大学, 総合科学部, 教授 (00026436)
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研究分担者 |
中越 信和 広島大学, 総合科学部, 助手 (50188918)
高橋 史樹 広島大学, 総合科学部, 教授 (00026436)
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キーワード | 自然農法 / 集約的慣行農法 / 水田 / 生物群集の構造と機能 / ウンカ類 / トビイロウンカ / 寄生性線虫 / ウンカシヘンチュウ |
研究概要 |
水田害虫として重要なウンカ類を中心に置いた生物群集を、東広島市を中心に、広島県内数箇所に選定した自然農法の農家水田と、その近隣の慣行的な集約的農法の一般農家水田において、比較調査した。 トビイロウンカの飛来は両者の水田に同程度にみられ、慣行的な水田では殺虫剤散布が行われたにもかかわらず密度が増加し、被害(坪枯れ)が生じたが、10年以上続けられた自然農法水田では、密度の増加がみられず、トビイロウンカの被害がなかった。また、自然農法を始めてからの経過年数が短いか、自然農法でも転作や構造改善事業などで水田が大きく撹乱された後の年数が短い場合にはウンカの被害が生じた。 自然農法水田では、群集構造において害虫種の占める割合が非常に小さく、ただの虫の割合が非常に大きいが、慣行農法水田では逆であった。また、植食者と肉食者共に、慣行農法水田では移住性の種固体群が、自然農法水田では逆に定着性のものが多くを占める傾向があった。 自然農法水田でウンカ類を低密度に保つ大きい要因は、ウンカ類を不妊化する寄生性線虫のウンカシヘンチュウであることが明らかとなった。この線虫に寄生されたウンカ類は、そのほとんどが短翅型となって、他の水田への移動能力が小さくなる。そのため、過度の殺虫剤防除や転作、構造基盤改善などの大きな水田撹乱作用があると、この線虫の密度を水田に回復させるのに自然農法水田でも10年近い長年月が必要であり、その間、ウンカが発生しやすいことが明らかにされた。 シヘンチュウ以外のウンカ類寄生者のカマバチ類やネジレバネ類などや、卵捕食者のタカグロミドリメクラガメなどの天敵類は、ウンカ類に随伴して水田に移住してくるため、慣行農法水田でも多く生息してた。しかし、ウンカ類が大発生した後でなければ天敵として働かないため、多くの場合、ウンカ類の制御に余り有効ではないことがわかった。
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