1.水田と畑の土壌モデルを戸外の各2個のコンクリート枠(径85cm、深さ60cm、無底)内に作製した。両土壌条件下に約1か年保ち、1988年12月にTOA HM-7Aで酸化還元電位を測定したところ、水田区は+130mVと+110mV、畑区は2区とも+410mVであった。従って、両土壌モデルはそれぞれ水田、畑土壌として、本研究に用いることができると判断された。 2.両土壌に水田と畑土壌生息性の土壌病菌Pythium paddicumとP.iwayamaiの卵胞子(500ppm小麦胚芽油添加10%V8ジュース液体培地で、15℃、3週間培養して形成させたもの)を導入し、現在それらの生存能を比較・調査中である。 3.別に、上記の実験と同じ実験を同じ大きさのコンクリート枠を用いて行っている。すなわち、1987年12月に卵胞子を埋没し、6か月間放置してその生存能を1988年6月に調べたところ、水田土壌からは水田生息性P.paddicumが22%、畑生息性P.iwayamaiが17%検出された。一方、畑土壌からはP.paddicumが8%、P.iwayamaiは全く検出されなかった。このように、水田におけるP.paddicumの分布を説明する結果を得たが、P.iwayamaiの畑における分布を説明する結果を得ることはできなかった。今後、この試験も継続して反復する予定である。 4.次年度以降に実施を予定していた緩衝液の選抜を行った。Goodの緩衝液のうち、これ迄に用いられてきたリン酸緩衝液よりも良好なMES緩衝液が見出された。この緩衝液を用いた場合、P.paddicumの菌糸生育最適pHは約4.5、P.iwayamaiのそれは約5.5であった。これらのpH値は、両菌が分布する水田と畑の土壌のpH値と一致し、pHが両菌の分布を決定している1要因であると推論された。
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