本研究では絹織物の摩耗による損傷特性について研究を行い、絹織物の耐摩耗性能向上への基礎資料とすることを目的とした。まず摩耗による絹繊維の損傷形態の特徴について、走査型電子顕微鏡観察を行い、次に絹織物の摩耗強度について、日常着として用いられることの多い綿布との比較において検討し、さらに摩耗強度に関与する物理的因子について検討した。また、市販絹混用織物の他繊維との混用状況の実態調査をし、さらにそれらの混用による摩耗強度への効果についても検討を行った。摩耗による絹繊維の損傷形態は、実用による摩耗の場合は、繊維表面からの副生繊維の発生がみられ、これにより光沢の低下をもたらし、繊維の細分化から強度が低下し切断に至ることが予測されたが、試験機による摩耗は、摩擦子をJISに設定されてるいエミリ-ペ-パとした場合は、繊維表面が粉末化並びに溶融し、実用による摩耗形態である副生繊維の発生は見られなかった。摩擦子を綿布とした場合には副生繊維の発生がわずかにみられた。絹織物の耐摩耗性能については綿織物との比較において、ユニバ-サル型法により測定を行った。その結果、標準状態における綿と絹では、構造が近似している場合には絹織物の方が摩耗強度は高い結果となった。ユニバ-サル法における実験は試験値の安定性の点で問題があるが、その点については、試験機作動中に、摩耗により発生する摩耗粉を定期的に除去することにより、ある程度の改良がみられた。摩耗強度と布の物理的特性との関係については、タテ糸方向の引張強度および摩擦抵抗力との間に高度な相関が認められた。絹混用織物における利用混用繊維はキュプラ、レ-ヨン、ポリエステル、綿が利用されており、特に再生繊維の利用が多くみられた。
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