絹を洋装として利用する場合に求められる性能は実用性、機能性である。例えば、洗濯機で洗濯できる、長く着いていてもしわにならない、雨に濡れても色落ちしない、黄変をおこさないなどといった機能をもたせなくてはならない。本研究では、絹の優れた性質を損なうことなく、これらの機能をもった絹布の開発をこころみた。 加工方法は、黄変防止効果が確認されている101S3%とSnCl_21%による処理絹布にのシリコーン樹脂5%で後処理を行った。 試料は未処理絹布、101S3%+SnCl_21%処理絹布、シリコーン樹脂5%による後処理絹布の3種類を用いた。 実験方法は、24時間の日光暴露試験を行い、その黄色度を測定した。その後洗濯機で水洗いを行い、それを交互に繰り返した。 実験結果、まず黄色度の結果を見ると、シリコーン樹脂5%による後処理絹布の黄変防止効果が最も優れている。これはシリコーン樹脂が繊維表面にコーティングされ、撥水性を有し、これによって紫外線吸収剤101Sの洗濯による流出を防いでいると考えられる。このシリコーン樹脂5%による後処理絹布の耐洗濯性を、市販合成洗剤を使用して測定した結果、20回に及ぶ洗濯後も処理絹布には顕著な撥水性が見られた。このことから、101S3%とSnCl_21%処理の後、シリコーン樹脂5%を処理した絹布の耐黄変性、耐洗濯性の向上が見られる。つぎに、この処理絹布の機械的性質を調べると、シリコーン樹脂5%による後処理絹布は、強度・伸度の低下は全く見られなかった。また、吸湿性、防しわ性を測定すると、未処理絹布と比較して。吸湿率の低下はほとんど見られず、防しわ性は若干向上した。以上の実験から、耐洗濯性、黄変防止性、防しわ性、撥水性等を絹布に付与させることができた。すなわち、絹の特徴を損なうことなく、若干の欠点を改善することができた。このようなことから、洋装分野での用途拡大が計れることを期待する。
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