絹の用途拡大という点から、洋装として利用する場合に求められる性能は、実用性、機能性である。たとえば、洗濯機で洗濯できる、長く着ていてもしわにならない、雨に濡れても色落ち、変色しない、黄変をおこさないなどといった機能をもたせなくてはならない。本研究では、絹の優れた性質を損なうことなく、これらの機能をもった絹布の開発をこころみた。加工方法は、(1)シリコ-ン繊維処理剤による加工、(2)101S+SnCl_2処理絹布へのシリコ-ン繊維処理剤による後処理、(3)弗素系処理剤による加工の3種類を行った。試料は未処理絹布および上記による加工絹布を用いた。実験方法は、紫外線照射および日光暴露試験を行い、その黄色度を測定した。その後洗濯機で水洗いをし、それを交互に繰り返した。 実験結果(1)シリコ-ン樹脂処理絹布の強度は未処理絹布と同程度で、処理による強度の低下は見られなかった。伸度は洗濯前、洗濯15回後とも未処理絹布より大幅に上回っていた。シリコ-ン樹脂処理によって強度、伸度の耐洗濯性が向上した。(2)101S+SnCl_2処理絹布へのシリコ-ン樹脂による後処理は、紫外線照射24時間おきに洗濯機で水洗いをし、風乾して黄色度を測定すると、10回の洗濯後も黄変防止効果が顕著である。これより、シリコ-ン樹脂5%による後処理絹布は、シリコ-ン樹脂が繊維表面をコ-ティングし撥水性を与えるため、101Sの洗濯による流出を抑えている。(3)弗素系処理剤による加工は、処理絹布の強度、伸度とも未処理絹布と同程度で、洗濯前、洗濯後とも処理による低下は見られなかった。紫外線を照射し、洗濯機で水洗いをし黄色度を測定すると、弗素樹脂で加工した絹布の方が優れている。このことから、洗濯によっても樹脂が剥落することなく、耐洗濯性に効果があらわれている。
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