野外昆虫より分離した白きょう病菌、赤きょう病菌および麹かび病菌からのプロトプラストの分離を試みた結果、それぞれZymolyase、Driselase、およびNovozyme処理により高率にプロトプラストが分離された。白きょう病菌および赤きょう病菌のプロトプラストは1個のプロトプラストを有しているものが多かったが麹かび病菌では数個の核を有しているものが多かった。再生・復帰率は白きょう病菌および麹かび病菌において良好な結果が得られたが赤きょう病菌においては著しく低いものであった。それはDriselase中に含まれるproteaseによるものと推定されたので酵素液中に牛血清アルブミン(BSA)を添加し、その改良を試みた結果、赤きょう病菌においても約70%の再生・復帰率が認められた。 塩化カリシウム・ポリエチレングリコール法によりそれぞれのプロトプラストの融合を試みた。その結果、白きょう病菌および赤きょう病菌において高い融合頻度を得たが麹かび病菌のそれは低く改良する必要があると考えられる。 一方、プロトプラスト融合により遺伝学的な解析を進めるためにはプロトプラストの保存に関する研究は不可欠であるが、糸状菌においてはそのような試みは少ない。そこで現在プロトプラストの保存法を検討中である。 各種昆虫により分離した白きょう病菌は菌株ごとにプロトプラストの分離条件あるいは融合率に差異が認められたことは白きょう病菌の宿主との関係において興味深い現象である。
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