キボシカミキリは発生生態や前胸背斑紋の違いから西日本型と東日本型に分けられるといわれている。これらの差異を生理的面より検討するため、西日本型として鳥取産を、東日本型として福島産を用いて酵素について調べた。その概要を報告する。 酵素活性はアガロースゲル電気泳動法によって分別した後、非特異的エステラーゼとフォスファターゼを検出しその泳動像を両地間で比較した。 エステラーゼの泳動像について調べた結果、ふ化幼虫において、移動度の少ない原点近くにある泳動帯が鳥取産に比較して福島産でやや低く現れた。また、福島産において、鳥取産と同じ移動度を示す泳動帯を合わせもち2本見られる個体があった。幼虫組織については血液、脂肪体、消化管について調べた。血液において、幼齢期には1本の泳動帯が見られ、鳥取産に比して福島産の多くのもので移動度が低く、活性が弱かった。老齢期には両地産とも陰極側に泳動帯が見られるようになった。また、福島産において、鳥取産と同じ移動度と活性のある泳動帯をもつ個体あるいわ活性の弱い2本の泳動帯をもつ個体も若干見られた。脂肪体がにおいて、血液と同じく原点近くで両者に移動度の異なる1本の泳動帯が見られた。個体変異は鳥取産のもので少なく、福島産で大きかった。特に、福島産において鳥取産のものと同じ移動度の泳動帯で活性の同じものや弱いものあるいはないものなどが認められた。消化管において、両者の泳動像にも差異が認められた。そして、個体差は鳥取産で少なく福島産で大きかった。次に、酸性フォスファターゼは消化管に活性が認められたが両地産の間に差異は認められかった。アルカリ性フォスファターゼは各組織とも活性が弱く両者の差異は見出せなかった。 以上の結果、エステラーゼの泳動像において両地産間に差異は認められ、福島産で個体変異が多かった。これらの点の解明は今後にまちたい。
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